耐震設計の基本は、大地震を受けても建物の崩壊を防止し、人命を保護することを第一の目標としています。 しかし、阪神淡路大震災以降、大地震の後でも使用できる建物は継続して使いたいというニーズが高まってきました。
そこで、2010年に日本建築学会の「鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説」（RC規準）が見直され、 損傷限界の概念が導入されました。地震後の残留せん断ひび割れ幅が過大とならずに、損傷限界以下であれば、 「損傷を受けていない」とする考え方です。
損傷制御設計とは、この損傷限界の概念に基づき、建物の耐用年限中に数度は遭遇する程度の中規模な地震に対する建物の梁・柱部材のせん断設計のことを言います。
せん断設計は、１次設計（許容応力度設計）と、２次設計（終局強度設計）を行います。１次設計では、 新たなRC規準により、短期荷重時の検討が下記の２種類から選べるようになりました。
損傷制御設計は 「部材の外力が許容内におさまる」ことをもって「損傷を受けていない」とする考え方です。 その理由は、許容内におさまっていれば、外力が取り除かれた後、部材の弾性復元力によって建物が元の状態に戻ることができ、補修の必要が生じないからです。 具体的には、地震後のひび割れ幅が、建物の安全性に問題ない範囲（0.3ｍｍ程度）にとどまる外力レベルを想定しています。
